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2019年01月21日付 産経新聞 【「保釈金」の決め方とは…ゴーン被告は過去最高か】

2019.01.21

メディア掲載

起訴された刑事被告人の身柄拘束を解いて釈放する刑事司法手続きの「保釈」。日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(64)をめぐって保釈申請の成否が国内外で注目されたが、「保釈保証金」の金額も関心を集めている。

現在のところ、裁判所は保釈を認めていないが、ゴーン被告が保釈される場合、もらっていた報酬額などから保釈保証金は「過去最高額になるのでは」との観測も強い。果たして保釈保証金はどのようにして決まるのだろうか。保釈決定に携わったことのある元裁判官は「基準は150万円から」と打ち明ける。

罪証隠滅のおそれ

保釈は弁護人や配偶者などの請求をもとに裁判所が判断し、決定する。刑事訴訟法は「保釈の請求があったときは次の場合を除き、許さなければならない」と規定。だが、「次の場合」である「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」などを理由に、保釈が認められないケースが多い。

仮に保釈が決まった場合、必要となるのが保釈保証金の納付。同法では、裁判所は保釈を決定する際に保釈保証金の金額を決めなければならないとされ、保証金額について「犯罪の性質や情状、被告人の資産などを考慮し、被告人の出頭を保証するに足りる金額」などと規定している。

「捨てるに惜しい」

では、保釈保証金の金額は具体的にはどのようにして決まるのか。

「保釈保証金を決める具体的な手順や方法を定めたものはないが、慣例的な“基準額”のようなものはある」。こう話すのは、元裁判官で、保釈手続きに携わったことのある片田真志弁護士(大阪弁護士会)だ。

片田弁護士によると、裁判所は、これまでの経験則や世間一般の収入額などから、執行猶予付き判決が見込まれる事件では罪名にかかわらず「150万円を算定のスタートとすることが多い」という。

例えば、執行猶予付き判決の可能性がある被告の場合、裁判所はこの150万円を基準として、保釈保証金の算定を始める。被告人の月収や預貯金額、不動産といった資産を勘案し、「これだけ納付しておけば逃亡のおそれはないだろう」という金額を決める。

これ以上の実刑となる可能性のある事件では「算定のスタートとする額ももっと高くなるが、明確な基準はない」という。

億超えも続々

場合によっては、保釈申請時に弁護士から「この程度なら支払える」と言い添えられることがあるといい、まれに検察側から「比較的高額に定められたい」と伝えてくるケースもあるという。片田弁護士は「裁判所は限られた資料の中から、被告人に捨てるには惜しいと思わせる金額を算出しなければならない」と打ち明ける。

こうして決められる保証金額で過去に高額だったのは、牛肉偽装事件の浅田満元ハンナン会長(20億円)、村上ファンド事件の村上世(よし)彰(あき)元村上ファンド代表(5億円)、ロッキード事件の田中角栄元首相(2億円)ら。

ゴーン被告の事件では、先に保釈された日産前代表取締役のグレゴリー・ケリー被告の保釈保証金が7千万円だった。仮にゴーン被告が保釈される場合は、その報酬は巨額であり、海外に拠点もあることから、過去の高額事例を上回る保証金額が設定されるのではないかとの見方が広がっている。

(産経新聞)

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